大和野菜(やまとやさい)は、日本の歴史が始まったとされる大和(奈良)で昔から作られている伝統的な野菜です。
ここ最近は、その見た目のユニークさや味の良さ、栄養などが注目されています。そして、大和野菜のなかには「縁起の良い野菜」もあるんですよ。
そんな“大和野菜”について、ここでは「その特徴や種類」、「手に入れる方法」まで詳しく紹介していきます。
大和野菜について知りたい人は、ぜひ最後まで読んでもらえればと思います。
大和野菜ってどんな野菜?
大和野菜は、ここ最近その価値が見直され、だんだんと知られるようになってきました。
しかし、京野菜など有名な伝統野菜と比べるとまだまだ情報が少ない状態です。
そこで、大和野菜がどんな野菜なのか、その特徴や種類をまずは見ていきましょう。
大和野菜の特徴
大和野菜の育つ奈良盆地は大昔、湖だったため栄養が豊富な土地です。
また、昼と夜の気温差が大きい気候でもあります。
そのため、昔から美味しい作物が育つ環境が整っていました。
そして、日本の歴史が始まったのも、この奈良であったといわれています。
昔からさまざまな野菜が全国から集まり、農業の技術も早くから進んでいました。
そんな奈良の土地と歴史の影響を受けながら代々育てられてきた野菜が“大和野菜”です。
戦後の日本では、野菜の品種改良が進んだため、大量生産ができるようになりました。
それによって皆が安く野菜を手に入れられて、さまざまな野菜を一年中食べることができます。
しかし、その進歩と一緒に“野菜の個性”が失われてしまったのも現実です。
大和野菜は、そんな野菜の個性が失われる前からの姿を残しています。
それぞれの野菜の見た目はユニークで、野菜らしい強い風味が味わえます。
また、栄養の面ですぐれているものが多いです。
品種改良された野菜に比べてビタミンやミネラル、食物繊維などを多くふくんでいます。
“大和の伝統野菜”の種類
大和野菜を大きく分けると、“大和の伝統野菜”と“大和のこだわり野菜”の2つにわかれます。
どちらも奈良を代表する特別な野菜ですが、大和の伝統野菜はとくに審査が厳しく、次のような条件を満たすものだけが“大和の伝統野菜”として認定されています。
・戦前から奈良県内で生産されている
・地域の歴史や文化を受け継いだ独特の栽培方法で「味、香り、形、由来」などに特徴がある
味や形だけではなく、育て方や由来まで審査されるなんて厳しい基準といえますね。そのため、奈良独自の野菜はたくさんあっても、大和の伝統野菜として認定を受けているものはたった20種類ほどです。
具体的には次のような野菜が、大和の伝統野菜”として認定されています。
・根菜類〈根や地下の茎を食べる野菜〉
宇陀金ごぼう、祝だいこん、片平あかね、筒井れんこん
・葉物野菜〈葉っぱの部分を食べる野菜〉
大和まな、千筋みずな(せんすじみずな)、結崎ネブカ(ゆうざきねぶか)、大和きくな、下北春まな(しもきたはるまな)
・いも類
大和いも、味間いも(あじまいも)
・果菜類〈実の部分を食べる野菜〉
ひもとうがらし、紫とうがらし、黄金まくわ、大和三尺きゅうり、大和丸なす、黒滝白きゅうり(くろたきしろきゅうり)
・香辛野菜〈料理に香りや辛味をそえる野菜〉
小しょうが、花みょうが
・その他
軟白ずいき(なんぱくずいき)
このなかでよく知られている大和野菜といえば、“大和まな”です。やわらかくて、甘みが豊富。
おひたしから和え物、煮物、漬け物にいたるまで、幅広い料理に合うことから、人気があります。
“大和のこだわり野菜”の種類
そして、大和野菜のなかには“大和のこだわり野菜”として認定されているものもあります。
大和のこだわり野菜とは、「栽培や収穫に手間をかけて栄養やおいしさを増した野菜や奈良県オリジナルの野菜」です。
そのなかには、伝統的な野菜以外にもよく見慣れた形のレタスやキュウリなどもふくまれます。しかし、奈良に昔から伝わる珍しい野菜もまた認定されています。
具体的には次のような野菜です。
・大和ふとねぎ
・香りごぼう
・半白きゅうり
こういった野菜もまた歴史があって、見た目や味に特徴があります。
縁起の良い大和野菜がある?
先ほど紹介した大和野菜のなかには、実は「縁起の良い野菜」もあるんです。
ここからは、そういった野菜の種類と縁起の良い理由を紹介していきます。
宇陀金ごぼう(うだきんごぼう)
宇陀金ごぼうは、奈良県宇陀(うだ)地方で栽培される独特なゴボウです。
宇陀地方の土は雲母(うんも)といわれる鉱物が多くふくまれています。
雲母は光に照らされると金色っぽくキラキラと輝くのが特徴です。
このゴボウを掘り出したときにも、この雲母が表面についています。
それがまるで金粉をまぶしたように見えることから、縁起の良い野菜とされているのです。
そのため、正月のおせち料理に使われることがよくあります。
関西では、新年の健康や開運を願って“たたきごぼう”といわれる、ゴボウをやわらかく煮て味付けした料理を食べる地域があります。
宇陀金ごぼうのようなゴボウであれば、より運も開けてきそうですね。
また、食べても美味しい野菜で、普通のゴボウと比べても肉質がやわらかく、ゴボウ特有の香りが豊かです。
食物繊維もたくさんふくまれていますので、健康にもいいのではないでしょうか。
祝大根(いわいだいこん)
祝大根も、その名前どおり縁起の良い大和野菜です。
直径2~3cmの細い大根で、奈良県では正月のお雑煮の具としてよく使われています。
年末になると地元のスーパーや八百屋さんにも並ぶそう。
奈良では、正月のお雑煮に入れる大根は「角が立たず円満にすごせますように」という意味を込めて、“円満”を意味する輪切りにします。
そして、人参や里いも、豆腐といったほかの具材も角をそぎ落とします。
このとき太い大根を輪切りにするとお椀におさまりません。そこでお雑煮用としてぴったりなのが細い“祝大根”というわけです。
そういった習慣から、昔からずっと育てられてきました。
味はさわやかで、肉質は詰まっていて、歯ごたえがあります。
よく煮汁を吸ってくれるうえ煮崩れもしにくいため、雑煮以外の煮物にもよく合います。
大和丸なす(やまとまるなす)
縁起の良い野菜といえば、昔からナスが有名ですね。ナスにまつわる縁起の良い話は多くあります。
たとえば、縁起の良い初夢として「一富士、二鷹、三茄子(いちふじ、にたか、さんなす)」の言葉は有名です。
このなかで“ナス”は「成す(成功する)」、つまり、お金持ちになったり子孫が繁栄したりするという意味があります。
また、ナスは奈良時代から栽培されていたことが確認されていて、高貴な人への贈り物としてナスの漬け物が作られていました。
大和丸なすは、縁起の良い野菜であるナスを、古くから人の手によってゆっくりと品種改良してきたものです。
まん丸で、つややかな紫黒色をした実は、たしかに縁起が良さそう。
肉質はきめ細やかで、シンプルな料理でも美味しく食べられます。
焼きナスや揚げ出しにしてもいいですし、煮崩れしにくいため煮物にしても絶品です。
大和野菜を手に入れる3つの方法とは?
美味しくて栄養豊富なうえに、縁起も良い大和野菜。
ぜひ食べてみたいものですが、栽培に手間がかかることから生産量が少ない野菜でもあります。
そのため、買える場所も限られています。
しかし、手に入れる方法はいくつかありますので、紹介していきます。
地元奈良の直売所
大和野菜を手に入れる方法としてまずあげられるのが、奈良県内にある直売所です。
これらの場所は、地元ということもあって新鮮な大和野菜を簡単に買えます。そのなかでもおすすめの場所2つを紹介します。
奈良に訪れたときは、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
まほろばキッチン 橿原(かしはら)店
全国でも最大級の大きさのファーマーズマーケットです。
ファーマーズマーケットとは、農家の人たちが自分の農場でとれた野菜を直接販売するスタイルの市場のこと。
生産者の顔が見えるので安心できるうえに、野菜も新鮮。大和野菜以外にも地元産の野菜や果物がたくさん並びます。
地元野菜を使ったレストランやフードコートなどもあるので、観光ついでに立ち寄るのもおすすめです。
住所:〒634-0003 橿原市常盤町605-1
営業時間:9:00~18:00(不定休)
アクセス:近鉄大阪線「大和八木駅」から奈良交通バス「八木耳成循環内回り」に乗り、「常盤町東」で下車すぐ。
URL:http://www.ja-naraken.or.jp/mahoroba/about_mahoroba.html
まほろばキッチン JR奈良駅前店
先ほど紹介したまほろばキッチンの2号店としてオープンしたお店です。
橿原店より規模は小さいのですが、JR奈良駅前にあってアクセス抜群なため、気軽に立ち寄れます。
こちらも大和野菜やそのほか季節の野菜、果物がたくさん並んでいます。
住所:〒630-8122 奈良市三条本町1098
営業時間:9:00~18:00(定休日 年末年始)
アクセス:JR奈良駅から徒歩2分。
URL:http://www.ja-naraken.or.jp/mahoroba/about_ekimae_mahoroba.html
東京都内にある奈良のアンテナショップ
とはいえ、東日本に住んでいる人など奈良の直売所に気軽に行けないという人もいるはず。
そんな人に便利なのが、都内にあるアンテナショップです。
アンテナショップとは、自治体などが地元の特産品などを紹介するためのお店。
奈良のアンテナショップでは、大和野菜を入荷していることもあります。お店の情報は次のとおりです。
奈良まほろば館
住所:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-6-2 日本橋室町162ビル1F・2F
営業時間:10:30~19:30(定休日 年末年始)
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」(A1出口からすぐ)
URL:http://www.ja-naraken.or.jp/mahoroba/about_ekimae_mahoroba.html
便利な場所にありますので、東京都内に行ったときは立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
ネット通販で注文する
直売所やアンテナショップもいいですが、「もっと簡単な方法はないの?」と思う人もいるかもしれませんね。
そういうときは「ネット通販で注文する」のが簡単で便利です。たとえば、次のようなセットは、品質のいい野菜がたくさん入っていておすすめです。
奈良の市場から届く“大和の季節野菜セット”
こちらは、奈良県中央卸売市場のプロの業者さんが選んだ奈良県産野菜・果物の詰め合わせです。
提供しているのは“大和の伝統野菜”、“大和のこだわり野菜”をPRしている「ならの特選食材流通協議会」。
内容はおまかせのため伝統的な大和野菜以外もふくまれていますが、新鮮で美味しい旬の野菜が自宅で楽しめます。
大和野菜を種から育ててみるのもアリ!
大和野菜を手に入れる方法は、実は買うことだけではありません。「種から育ててみる」という方法もあります。
手間や時間がかかりますが、愛情をそそいで育てたぶんより美味しさも感じられます。
すべての大和野菜の種が買えるわけではありませんが、一部の種は一般に出回っています。
たとえば、あとから紹介するような種ならネット通販で買うことができます。
趣味としてベランダや庭で育てるのもいいですし、お子さんの夏休みの自由研究なんかにもおすすめです。宿題も進んで美味しく食べられて一石二鳥ですね。
育てやすくて美味しい“大和まなの種”
大和の伝統野菜のなかでも有名な、“大和まな“の種です。和え物や煮物、炒めものなど、幅広い料理に合うので、自宅で食べるにはもってこいです。
育てやすくてプランターでもよく育つので、マンションのベランダでも問題なく栽培できます。
土は、ホームセンターなどに売っている野菜栽培用の土を使えば大丈夫。4月~10月の温かい時期に種をまけば、30日前後で収穫できます。
たくさん収穫できる“ひもとうがらしの種”
こちらは大和の伝統野菜である“ひもとうがらし“の種です。
とうがらしといっても、辛味はほとんどないので、家族みんなで食べられます。
味も甘みがあって美味しく、炒めものや天ぷら、煮びたしなんかによく合います。
プランターでもよく育ちますが、肥料をあげるなどして土の栄養をからさないようにしましょう。
本州の平地では5~6月に種をまくと、夏から秋にかけてたくさんの実をつけてくれます。
まとめ
奈良で昔から作られてきた“大和野菜”は、大量生産された野菜とちがった魅力があります。たとえば、個性的な見た目や野菜らしい味、すぐれた栄養などです。
現在では“大和の伝統野菜”と“大和のこだわり野菜”として認定されている数十種類が大和野菜といわれています。そのなかでも“宇陀金ごぼう”や“祝大根”、“大和丸なす”などは、味はもちろん縁起が良い野菜としても有名です。
育てるのに手間がかかることから販売が少ない野菜ではありますが、地元奈良の直売所や都内にあるアンテナショップなどで買えます。
また、ネット通販で注文すると、もっと手軽です。
それから、「種から育てるという方法」もあります。手間や時間はかかりますが、自分で育てた野菜はより美味しく感じるもの。
プランターで育てられる野菜もありますし、おすすめの方法の一つです。