さるぼぼというお人形をご存知でしょうか。昔から子宝に恵まれる不思議なお人形として多くの人たちから愛されています。さるぼぼという名前もそうですが、その姿もとても不思議な形をしています。なぜ、さるぼぼが子宝の縁起物とされているのかその由来や理由について調べましたので、解説します。
もくじ
さるぼぼって何?
さるぼぼという人形をそもそも知らない、という人もいるかもしれませんね。お土産品として売られているお人形です。
そんなさるぼぼにはとても古い歴史や伝承がありました。それらをご紹介します。
岐阜県飛騨地方で作られている人形
さるぼぼは、岐阜県飛騨地方で作られているお人形です。最近はお土産品として有名になりましたが、当初はお守りとして作られていたという歴史があります。
ちなみに「さるぼぼ」という名前はとても変わっています。この名前にも意味があり、「さる」は動物の猿のことを指しています。そして「ぼぼ」は赤ちゃんという意味です。さるぼぼは「猿の赤ちゃん」という意味があるのです。
奈良時代に中国からやってきた
さるぼぼの原型と言われているのが、奈良時代に中国から入ってきた「這子(ほうこ)」や「天児(あまがつ)」だと言われています。
「這子」は、ハイハイできるようになった赤ちゃんをかたどった縫いぐるみです。別名「はいはい人形」とも呼ばれています。赤ちゃんの魔除けの意味や願いを込めて作られました。
「天児」は、幼児の姿をかたどった木偶人形です。赤ちゃんに降りかかる凶事や災いを退けるための依り代代わりに作られていました。
これらの人形はどちらも顔がありません。さるぼぼも顔がないので大変似ていますよね。また、赤ちゃんをかたどっているという共通点もあり、原型ではないかと言われています。
顔がないのは映し鏡だから
さるぼぼには顔がありません。どうして顔がないのかというと、映し鏡だからです。
さるぼぼは持ち主の気持ちに寄り添ってくれると言われています。持ち主が楽しい時はさるぼぼの表情も明るくなり、悲しい時にはその表情が暗くなるのです。
顔が描かれていると、そのような持ち主の気持ちに寄り添うということが難しくなります。顔を描かないことで持ち主がさるぼぼの表情を想像し、さるぼぼを通して自分の本当の気持ちを知ることができるようになっているのです。
さるぼぼのお守りとしての歴史
さるぼぼは、お守りとして昔から愛されてきました。現在はお土産品として有名ですが、子宝に恵まれるお守りとして購入していく人も多くいます。
さるぼぼは何故子宝に恵まれる縁起物のお守りとされているのでしょう。その歴史について調べましたので紹介します。
最初は貴族のお守り
さるぼぼは、日本に入ってきた当初は貴族のお守りとして愛されていました。
貴族の間では庶民に比べてお世継ぎが産まれなければ、そこで家系が終わってしまうことになり、大変問題視されていました。現在以上に、そして庶民以上に子宝を願っていたのです。
また、当時の出産は現在のように医療設備が整っていなかったため、命がけと言っても過言ではありません。元気な赤ちゃんが産まれても母親が亡くなってしまったり、反対に死産だったりすることが大変多かったのです。そのため、安産を強く願っていました。
このような時代背景から、母子ともに健康で子宝に恵まれるようにという願いを貴族が強く願い、そのお守りとしてさるぼぼが大切にされていたと言われています。
江戸時代に入って民間にも広まった
さるぼぼが庶民にも広まり始めたのは、江戸時代に入ってからです。何故、江戸時代に入ってから急速にさるぼぼが庶民の間でも広がったのかというと、時代背景が関係しています。
江戸時代で天然痘が大流行した時期がありました。もともと抵抗力が弱い子供やお年寄りは、天然痘にかかってたくさん亡くなりました。はっきりした治療方法もわからず、薬も大変高かったため、多くの人たちは天然痘を恐れました。
「どうか我が子だけは天然痘にかかりませんように」という願いから、さるぼぼがお守りとして注目されるようになります。もともとさるぼぼは子どものためのお守りですから、天然痘からも守ってもらえると考えたのです。
当初、さるぼぼは白いお人形だったと言われています。現在のように赤いお人形になったのは、天然痘を恐れた人たちが魔除けの意味も込めて赤い布で作るようになったからだと言われています。
さるぼぼが子宝の縁起物とされている理由
さるぼぼが子宝の縁起物とされているのは、どうしてなのでしょうか。そこには語呂合わせと不思議な伝説が関係しています。
二つの語呂合わせと、さるぼぼにまつわる不思議な伝説をご紹介します。
「猿(さる)」を音読みにした語呂合わせ
さるぼぼが子宝の縁起物とされているのは、「猿(さる)」を音読みした時の語呂合わせが関係していると言われています。
「猿」は音読みをすると「エン」です。「エン」を「縁」と置き換えることで、子どもと縁があるようにという意味が出来上がりました。また、この「縁」には夫婦仲が良くなるようにという願いや意味も込められています。夫婦仲が良ければ、子供も訪れてくれるだろうと考えたのです。
このため、さるぼぼは子宝を願う縁起物だけではなく、夫婦仲を願う人たちの間でも縁起物として愛されています。
「猿(さる)」を訓読みにした語呂合わせ
さるぼぼが子宝の縁起物だとされているのは、「猿(さる)」を訓読みした時の語呂合わせが関係しているという説もあります。
「猿(さる)」を「去る」に置き換え、災いが去るとしたのです。子供ができないのは何らかの災いが身に降りかかっているからだと考えました。そこで、原因はわからないけれど目に見えない災いを退ければ子宝に恵まれると考え、さるぼぼが子宝に恵まれる縁起物として愛されるようになったと言われています。
昔は子供ができるのは当たり前のことで、子宝に恵まれないのは鬼などのような災いが取り付いているからだとされたのです。それを取り除けば子宝に恵まれると多くの人が信じていたのです。
赤子をすくった猿の話
さるぼぼは「猿の赤ちゃん」という意味があると、一番最初に説明しました。どうして猿の赤ちゃんなのだろうと不思議に思った人もいるでしょう。実は、これにはある伝承が関係しています。
その昔、とある農家の夫婦が子供を田んぼの脇に寝かしつけて農作業に勤しんでいました。やがて赤ちゃんは眠りから目を覚まします。そばに両親がいないことに不安を感じた赤ちゃんは起き上がり、ハイハイをして側溝のそばまで移動してきました。しかし、両親は農作業に夢中になり、赤ちゃんが側溝に落ちそうになっていることに気づきません。
そこへ一匹の猿が現れ、側溝に落ちそうになっている赤ちゃんを助けてくれました。そのことに気づいた夫婦やその周りの人たちは、赤ちゃんを助けてくれた猿に感謝をし、その気持ちを表すためにお人形を作りました。
この時に作られたお人形が、現在のさるぼぼだと言われています。感謝の気持ちを表すためにお人形を作ったなんて、心温まる伝承ですね。
まとめ
さるぼぼは、現在はお土産品として大変有名です。ですが、もともとは子供のためのお守りとして大切にされていた人形でした。それが転じて、現在は子宝に恵まれる縁起のいいお人形とされ、愛されています。見た目も可愛いお人形ですから、ぜひ購入してみてください。