お盆になるときゅうりや、なすで作った動物の飾りを見かけたことはありませんか?他の年中行事で、きゅうりとなすのお供え物はあまり見かけませんよね。
今回はお盆の習慣の1つ、きゅうりとなすのお供え物について詳しく調べてみました。
子供になんて教えたらいいかわからない…と悩んでいる人も、ぜひ由来や作り方をチェックしてみてください。
もくじ
お盆にお供えする「精霊馬」とは?
お盆にお供えするきゅうりとなすは、「精霊馬」を表しています。「精霊馬」とはご先祖や亡くなった人の魂が、浄土からこの世に戻ってくる時に使われる乗り物のことです。精霊馬の「精霊」とは西洋の妖精ではなく、仏教で亡くなった人やご先祖の魂のことを表します。
そもそも精霊馬とお供えするお盆は、亡くなった人やご先祖の魂が里帰りをする時期と考えられています。大切な魂が迷わずに安全に辿り着けるようにと、動物の形に見立てた供物をお供えするのです。
どちらも「精霊」が乗る乗り物ですが、それぞれの違いを見てみましょう。
きゅうり・・・割りばしで4本の脚をつけて「馬」に見立てる
ご先祖や亡くなった人の魂がこの世に帰る時に乗るもの
なす・・・割りばしや爪楊枝を4カ所に刺し「牛」に見立てる
ご先祖や亡くなった人の魂が浄土(あの世)へ戻る時に乗るもの
行きの乗り物が「馬」に見立てられているのは、「早馬」が由来とされています。「精霊馬」の習慣が根付いた当時は馬が一番早い乗り物であり、少しでも早くご先祖や亡くなった人が里帰り出来るようにと願いが込められています。
一方帰りのなすは「牛」に見立てられています。牛はマイペースで歩む速度が遅く、ゆったりとしていますよね。浄土(あの世)への帰りがゆっくりであり、少しでもこの世に留まって欲しいという願いが込められています。
なぜ、なすやきゅうりを供える
野菜にはたくさん種類があるのに、なぜなすときゅうりが使われるようになったのでしょうか。
諸説ありますが、夏野菜の定番として収穫量が多かった野菜が「なす」・「きゅうり」だったと言われています。
旧暦のお盆時期の7月は農業の最盛期を迎えており、収穫を感謝するという意味でも使われていたのではないでしょうか。
また沖縄では、サトウキビをお供え物にする文化もあります。地域によってもお供えする野菜や、供物に特徴がみられますね。
いつからいつまで供えるのか
きゅうりとなすは水分の多い野菜なので、あまり早い時期に作ってしまうとお盆の時期までに腐ってしまいます。いつ頃精霊馬のお供えを行うと良いのでしょうか。
ご先祖や亡くなった人の魂を迎えるのは、お盆の初日の夕方です。お盆に入った朝に精霊馬を作ると、迎え火を焚く夕方に間に合いますよね。
また精霊馬と精霊牛を片づける時は、送り火を焚いた翌日に行うと良いでしょう。地域によっては、送り火を焚いたその日の内に片づける風習がある地域もあります。お盆を迎える前に、自分地域での習慣を確認しておくのがおすすめです。
精霊馬の作り方と供え方
小さい子供とお盆を迎える時は、精霊馬を一緒に作るのもおすすめです。宗教や風習によって多数の作り方がありますが、一般的な作り方を調べてみました。
まず準備するものから見ていきましょう。
・きゅうり・・・まっすぐなものよりも曲がっているものが良い
・なす・・・きゅうりと同じく曲線があるものの方が良い
・割りばしまたは爪楊枝
きゅうりとなすは、曲がったものを選ぶと動物らしい胴体に見えます。きゅうりは馬に見立てるので、スラリとした細身の早く走れそうな形のものを選ぶと良いでしょう。
またなすは牛に見立てるので、身の詰まった重量感のあるものを選ぶのがおすすめです。また子供と一緒に作業する時は、割りばしや爪楊枝で怪我をする可能性があります。
爪楊枝や割り箸を刺す時は、手元に注意しながら行いましょう。
「精霊馬」と「精霊牛」の作り方
まず脚部分を作ります。
割り箸は1セットを4等分にします。割りにくい時は、予め印をつけてからキッチンバサミを使いましょう。爪楊枝を使う場合は、8本分用意します。
次になすのヘタ部分を頭に見立てて、身の詰まった部分に割りばしや爪楊枝を刺します。割りばしや爪楊枝は脚にあたる部分なので、きゅうりよりも短いものを使うとより牛らしくなります。
きゅうりに割りばしや爪楊枝を刺す時は、長さのあるものを使うとすらっとした早馬の雰囲気を出すことが出来ます。なすと同じようにヘタのある部分を頭にして、一番曲がっている部分に割りばしや爪楊枝を刺しましょう。
割りばしや爪楊枝を刺した後に、きちんと起立するように斜めに刺すのもポイントです。脚の左右がハの字になるように刺すと、胴体の重さを支えやすくなりますね。
精霊馬を置く時のポイント
お供え物として精霊馬を飾るには、どこに置くのが良いのでしょうか。
仏間やお墓参りの時の供物として、お供えするのが一般的です。昔は「精霊棚」という、ご先祖や亡くなった人の魂が帰ってきた時に過ごす場所に供えられていました。
仏壇にお供えする時はまず頭側を仏間に向け、迎え火を焚く時には頭を反対側へ向けると良いでしょう。
お墓に供える場合は、このように位置を調節してみるのがおすすめです。
・迎え火を焚く前にお供えする場合・・・お互いの頭部が向かい合うように置く
・送り火を焚く時にお供えする場合・・・外側を向くように頭部を外へ向ける
精霊馬は地域によって違いがある?
地域によっては行きも帰りも、きゅうりの精霊馬を供物にする地域もあります。迷わずに帰り道を戻れるようにという願いから、きゅうりの「精霊馬」を置きます。
また行きがなすの「精霊牛」、帰りがきゅうりの「精霊馬」という反対の地域もあります。ゆったりと里帰りして欲しいという気持ちと、迷わず戻れるようにという願いが込められています。
さらに地域によって、精霊馬を飾るタイミングも異なります。
・北海道から中部地方・・・送り火を焚くお盆の最終日のみ
・関東地方・・・迎え火を焚くお盆初日からお盆最終日まで
宗教や習慣によって精霊馬の意味や飾るタイミングが違うので、家ではどんな形をとっているのか調べてみるのも面白いですね。
どの地域の「精霊馬」・「精霊牛」の習慣も、ご先祖や亡くなった人を思いやる気持ちが込められている大事な習慣と言えるでしょう。
まとめ
きゅうりとなすをお供えするという習慣は、他の年間行事ではみかけない特別な習慣ですよね。
しかし「馬」に見立てたきゅうりと、「牛」に見立てたなすはご先祖や亡くなった人の魂が里帰りするお盆に大切な供物です。
・きゅうり・・・脚の早い馬に見立てて少しでも早く現世へ帰れるように
・なす・・・歩みのゆっくりした牛に見立てて時間をかけてあの世へ戻れるように
上記のような願いが込められ、今の「精霊馬」の形になったと言われています。
また「精霊馬」は地域や宗教によって違いがありますが、それぞれが故人を大切に願い安らかに現世で過ごしてほしいという気持ちに溢れた風習と言えます。
簡単に作れるので小さい子供と一緒に、「精霊馬」を作ってみるのも良い経験になるでしょう。お墓参りや、仏間にお供えする時は今回ご紹介した置き方のポイントもぜひ参考にしてみてくださいね。
今年のお盆にはご先祖や亡くなった人の魂が無事に帰ってこれるように、きゅうりとなすの「精霊馬」でお迎え・お見送りをしてみてはいかがでしょうか。