真夏やおめでたい席で使用されることが多い扇子。日本で扇子は縁起物とされていますが、その理由を知っていますか?どうして日本で扇子が縁起物とされているのかについての理由や由来について調べてみました。扇子における注意点についてもご紹介しますので、参考にしてください。
もくじ
日本で扇子が縁起物とされる理由
暑い夏やおめでたい席などで使う人も多い扇子。日本ではセンスは昔から縁起物とされていました。どうして、扇子は縁起物とされているのでしょう。その理由についてはあまり知らない人が多くいます。
そこで、日本で扇子が縁起物とされている理由について調べてみました。ご紹介しますので、参考にしてくださいね。
形が末広がりだから
日本では縁起物とする時、その形にこだわることがあります。扇子もそんな形に注目した縁起物の一つです。
扇子を開いて逆さまにしてみてください。下の部分が大きく広がり、上に行くほどに広がりが小さくなります。これの形を「末広がり」と言います。末広がりは昔から縁起物として大変重宝されてきました。
末広がりが縁起物とされているのは、その姿かたちが富士山に似ているからです。日本では昔から富士山は霊山として信仰の対象にもなってきました。この富士山の形と同じ末広がりにも、神様のご利益や力が宿るとされ、縁起がいいと考えられていたのです。
扇子も開いて下に向けた時、富士山と同じ末広がりになります。ここから、扇子にも神様のご利益が力が宿ると考えられ、縁起物とされるようになりました。
舞を奉納する時に扇子を使ったから
日本では、昔から神様に舞を奉納するという風習が根付いています。京都にある清水の舞台は、神様に舞を奉納するための舞台でした。神様は優雅な舞が好きと考えられ、美しく舞を踊る人には神様が宿るとも考えられていました。
神様に舞を奉納する時に必ず用いられていたのが扇子です。扇子を優雅に使って舞を踊ることで、舞そのものさらに優雅になり、神様が喜んでくださると考えられていたのです。また、舞に使う扇子そのものにも、神様が宿ると考えられていた時代もありました。
神様に奉納する際の舞に使う扇子は、大変神聖なものとされていました。そのような神聖なものを普段使いにすることで、そこに神様のご利益が力が宿り、幸運になるという考えが生まれたのです。
扇子は高貴な人しか使わなかったから
扇子が日本に生まれた当時、高貴な人しか使わなかったという歴史があります。扇子はその作りが複雑であることから大変高価なものとされていました。
また、庶民は毎日の生活に追われ、扇子で優雅に仰いで生活するということができませんでした。扇子で自分自身を仰いでいる暇があったら働いてお金を稼がなければいけなかったのです。
扇子を使う人は、毎日生活のために働かなくても良い高貴な人たちばかりでした。庶民から見たら、とてもうらやましい生活だったでしょう。自分もいつか扇子を使うくらいのお金持ちになりたいという思いが生まれ、扇子に憧れを抱くようになります。
扇子はいわばお金持ちの象徴と考えられるようになり、それが逆転して扇子を持っていれば優雅な生活ができるようになるという考えに変化します。そこから、扇子は縁起物とされるようになりました。
日本で縁起物として扇子が使用される場面
日本で縁起物として扇子が使用される場面にはどのようなものがあるのでしょう。縁起物という理由で扇子が用いられる場面について調べましたので、ご紹介しましょう。
成人式
扇子が縁起物として用いられる場面としてまず最初に挙げられるのが成人式です。最近の成人式で、扇子を使う人はあまりいません。ですが、昔の成人式では必ず扇子が使われていました。
扇子には末広がりというおめでたい意味があります。末広がりには「繁栄」や「成功」という意味があります。成人を迎えてこれから人生で多くの成功を収め、ますますの繁栄を願うという意味が、扇子には込められているのです。
そのため、成人式のお祝いに扇子を贈ると良いとされています。扇子を贈ることで、「あなたのこれからの人生の成功を祈っています」という願いも込めて贈ると、大変喜ばれるでしょう。
七五三
七五三でも扇子は縁起物として用いられます。七五三は子供のお祝いですから、扇子を贈るのはおかしいと思う人もいるかもしれません。実際、最近の七五三で扇子を用いる人はほとんどいません。
七五三は生まれてきた子供のこれからの成長を願う神聖な儀式です。子供が健康に育ち、明るい人生を送ることができるようにという願いも同時に込められています。
扇子を七五三に贈ることで、「成長と成功を願う」という意味を込めることができます。七五三に扇子を贈る際には、金色でおめでたい絵柄の入ったものを贈ることが多くあります。金色も縁起物の意味があり、更におめでたい絵柄を入れることで、神様からのご利益が頂けるとされているからです。
お正月
江戸時代には、お正月に扇子を贈るという風習がありました。扇子は末広がりという縁起物ですから、扇子を贈ることで「今年一年、良い年でありますように」という意味も込められているのです。
現在では噺家さんや落語家さんの間で、お正月に扇子を贈るという風習が残っているようです。末広がりという縁起物として贈っているという理由もあります。また、噺家さんや落語家さんは仕事で扇子を使います。お正月に贈られた縁起物の扇子を使うことで、より多くのお客様が入ってくるように、という意味もあるのです。
大入りという縁起物の意味では、商売をしている人たちの間でもお正月に扇子を贈るという風習を取り入れているところがあるようです。ですが、最近は扇子よりも安価で使いやすい団扇を代わりに贈る、というところが多くなっているのが現状です。
扇子が縁起物とならない場合も
扇子は日本では縁起物として考えられています。ですが、この扇子が縁起物とはならない場合もあります。それは海外だけではなく、日本でもある特定の場面でも注意が必要です。
扇子が縁起物とならないのは、どのような場面なのでしょうか。注意が必要なシチュエーションをご紹介します。
中国で扇子を贈るのはNG
中国では、お祝いの品として扇子を贈ることはNGとされています。これは中国語の「扇子」の発音に関係しています。
扇子は中国語で「シャンズ」と発音します。この発音が「解散(ジエサン)」などのような「散(サン)」を連想させるのだそうです。「散る」という言葉は日本でもあまり縁起の良い言葉とはされていません。これは中国でも同じです。
そのため、中国で扇子を贈るのはNGとされています。日本では縁起物だからと言って、中国のお友達に扇子をプレゼントするのはやめておいた方が良いでしょう。
結婚の贈り物として扇子を贈るのは良くない
結婚のお祝いで扇子を贈るのは良くないとされています。結婚はとてもおめでたい席です。扇子も末広がりとしての縁起物ですから、結婚のお祝いとして扇子を贈るのは良いと考える人もいるかもしれません。
実は、結婚のお祝いで扇子を贈った場合、「広がる」という意味が「二人の距離を広げる」という意味に転じられ、あまり良くないとされています。夫婦仲が悪くなると考えられているのです。
結婚式などのお祝いの席で自分自身が扇子を用いるのは縁起物としての意味が強くなるので問題ありません。ですが、結婚のお祝いという意味になると扇子の縁起物の意味は薄れてしまいますから、注意しましょう。
まとめ
日本では昔から扇子は縁起物として愛されてきました。現在も、おめでたい席では扇子を用いる人が多くいます。扇子が縁起物とならない場面はごく一部ですから、その点だけ注意して用いればまったく問題ありません。扇子は日本の文化でもありますから、どんどん用いてくださいね。