お盆に祭壇を飾る風習があることをご存知でしょうか?最近ではお盆に祭壇を飾る人は少なくなりつつあるようです。その為、いざ祭壇を飾ろうとしてもわからないということもあるでしょう。ここでは、そんな祭壇の正しい飾り方から処分の方法までご紹介していきます。
もくじ
お盆の祭壇とは?
お盆の祭壇の飾り方や処分を知る前に、まずはお盆の祭壇とはどういうものなのかを知る必要があります。ここではお盆の祭壇の意味などについて、ご紹介していきます。
亡くなった霊をお迎えする場所
お盆の祭壇は亡くなった方の霊をお迎えする場所です。昔の日本にとって、亡くなった方の霊は特別な存在でした。この世から旅立って行ったということは、神様の存在に近くなった捉えていたからです。霊は生きている人間に比べて尊い存在だと考えられていました。
そのような尊い存在である霊をお迎えする為には、特別な場所を用意する必要があると考えられていました。そもそも「祭壇」は尊い存在をお迎えする為の場所です。亡くなった方の霊も尊い存在ですから、祭壇を設けてお迎えするという風習が根付きました。
亡くなった方の霊へのサイン
お盆の祭壇は亡くなった方の霊へのサインという意味もあります。このサインには2種類あります。
一つ目は、「あなたの返ってくる場所はここですよ」という意味です。亡くなった方の霊は、長い間あの世にいることになります。すると、いざお盆の時に帰ってこようと思っても、どこが自分の生前の家だったのかわからなくなることがあります。その為、祭壇を作って場所を知らせてあげているのです。
もう一つは、「お迎えする準備ができました」という意味です。亡くなった方の霊をお迎えすることは、神様をお迎えすることに似ています。お迎えする際には準備をしておく必要があるのです。そのお迎えの準備ができたので、いつでも帰ってきてくださいという合図を送っています。
お盆の祭壇に使われる中身の意味
お盆の祭壇には、さまざまなものが使われます。実はこれらにも大切な意味があるのです。ここでは、そのお盆の祭壇で使われるものの意味についてご紹介していきます。
茣蓙(ござ)
お盆の祭壇には、茣蓙(ござ)が敷かれます。これは「マコモ」と呼ばれるイネ科の植物を編んで作られています。
その昔、お釈迦様は病人を治すことに尽力されていました。その時、お釈迦様は病人を必ずマコモで編んだ茣蓙の上に寝かせていたと言われています。
このことから、亡くなった方の霊をお迎えする祭壇には、マコモで作られた茣蓙を敷くという風習が根付きました。
笹竹(ささだけ)
お盆の祭壇には、必ず笹竹(ささだけ)が用意されます。これは笹には結界を張る力がある、と考えられているからです。
亡くなった方の霊をお迎えする時、必ずお迎えしたい霊だけがやってくるとは限りません。時には邪な霊もお迎えしたい霊にくっついてやってくることがあります。
そのようなことがないように、邪悪な霊を跳ね返す意味で笹竹も用意されています。
ほおずき
お盆の祭壇には、ほおずきも用意されます。ほおずきは亡者が持つ提灯(ちょうちん)の意味があります。
亡くなった方の霊は、提灯を持って冥途(めいど)の道を歩くと言われています。冥途(めいど)の道は真っ暗なので、足元を照らす必要があります。その時に持つ提灯がほおずきだと言われています。
盆提灯(ぼんちょうちん)
お盆の祭壇の両端には、盆提灯(ぼんちょうちん)というものが飾られます。これには二つの意味があるとされています。
一つは亡くなった方の霊が持つ提灯の意味です。ほおずきと同じ意味です。亡くなった方が自分の足元を照らす為に使う提灯の意味があります。
もう一つは、亡くなった方の霊が迷子にならないようにする為です。「あなたの返ってくる場所はここですよ」ということを示していると言われています。
精霊馬(しょうりょうま、しょうりょううま)
お盆の時に、ナスやキュウリで作ったお人形のようなものを見ることがあるでしょう。これらは「精霊馬(しょうりょうま、しょりょううま)」と呼ばれています。
キュウリは馬を意味しています。亡くなった方の霊が馬に乗って早くこの世へ帰ってくることができるように、という願いや意味が込められています。
ナスビは牛を意味しています。亡くなった方の霊が牛に乗って、少しでもゆっくりあの世へ帰っていくようにという願いが込められています。
お供え物の食べ物
お盆の祭壇には、様々な食べ物や飲み物をお供えします。これは、亡くなった方の霊の空腹を満たしてもらおうという願いが込められています。
亡くなった方の霊のほとんどは空腹だと考えられています。生前の罪を償う為、あの世ではお腹いっぱいに物が食べられないと信じられているのです。
お盆でこの世へ帰ってきた時くらいは、あの世での空腹を満たして欲しいという願いなのです。
盆花
お盆の祭壇にはお花も飾られます。
中でも「ミソハギ」という花は「禊萩」という漢字を書きます。「禊」は悪霊を払うという意味があるので、ミソハギをお盆の祭壇にお供えします。
また、「桔梗(キキョウ)」も、お盆の祭壇にお供えします。これは、「キキョウ」を「帰郷」になぞらえているからです。亡くなった方の霊が無事帰ってくることができるように、という願いが込められています。
お盆の祭壇の飾り方
お盆の祭壇を用意する時には、決まった飾り方があります。その飾り方について、ご紹介していきましょう。
飾るものの配置
お盆の祭壇は2段または3段で構成されます。
一番上にはまず「緞子(どんす)」と呼ばれる絹織物の敷物を敷きます。その上に亡くなった方の写真や位牌などを置きます。そしてその両端に盆提灯を飾ります。盆提灯の代わりに霊前灯を飾ることもあります。
二段目には、お供え物の食べ物や飲み物を飾ります。さらに花瓶に挿した盆花も飾ります。盆化は花瓶にたくさん挿すのではなく、2~3本くらいしましょう。
最下段には、マコモを敷きます。その上にキュウリやなすびで作った精霊馬をお供えします。
お盆の祭壇を飾る方角
お盆の祭壇そのものを飾る時には、方角にも注意しましょう。
一般的な向きとしては、仏壇と同じ向きにお盆の祭壇を飾ります。お盆の祭壇は仏壇の前に設置されることが多いからです。仏壇の中に祭壇を設置することもあります。
また、北側にお盆の祭壇を設置して南向きにすることもあります。これは、古い中国の習わしが関係しています。昔の中国では、高貴な人は南向きに座る習慣がありました。日本人にとって亡くなった方の霊は高貴な存在と考えられていた為、お盆の祭壇も南向きに設置することがあります。
その他には、お盆の祭壇を宗派の総本山の方角に向けて飾ることもあります。これは宗派によって異なります。気になるようなら僧侶に相談してみると良いでしょう。
お盆の祭壇はどこで買える?
お盆の祭壇は、基本的には仏具店で購入します。仏具店はお盆の祭壇に飾る為の道具なども詳しくご存知です。購入する際に相談してみると良いでしょう。
また、ネット通販でも購入することができます。ネット通販では、一般的なお盆の祭壇がひとまとめになって売られています。こだわりがないのなら、ネット通販で購入するのも一つの方法です。
最近では、お盆の祭壇をレンタルしてくれるところもあります。安いものなら1万円台でれんたるできます。購入しても1万円くらいします。保管場所のことも考えて、レンタルをする人も多いようです。
祭壇の処分の仕方に注意
祭壇を処分する際には注意が必要です。
まず、祭壇は送り盆の翌日に片づけます。送り盆は16日です。ですから、翌日の17日に祭壇を片付けるようにしましょう。それまでは亡くなった方の霊やご先祖様がまだいらっしゃいます。ですが、いつまでも飾っておくと今度は悪霊がやってくることもあります。遅くとも翌々日の18日には片づけるようにした方が良いでしょう。
更に、祭壇を処分する際には必ずお寺や神社に相談しましょう。
物によってはお焚き上げをしてもらう必要があるからです。お焚き上げとは、お寺や神社で他のお札などと一緒にも燃やしてもらう供養の一環の儀式です。勝手にごみとして処分してしまうのは良くありません。どのように処分すれば良いのか相談しましょう。
まとめ
最近ではお盆に祭壇を飾るところはとても少なくなっています。ですが、お盆の祭壇を作ることは決して難しいことではありません。毎年ではなくても、節目になる年のお盆だけ祭壇を飾ってみてはいかがでしょうか。