“初盆(新盆)”は故人が亡くなられて喪明け後(49日より後)に初めて迎えるお盆です。
初めてこの世に帰ってくる日とされていますから、初盆の間はゆっくりと安らかに過ごしてほしいもの。そういった思いから「初盆にはさまざまな準備をして、故人やご先祖様を供養する」のが昔からの習わしです。
“初盆の飾り”はそんな大切な準備の一つです。ここでは、「初盆の飾りをする意味」から「何を飾ればいいのか」、「飾り方」などを解説していきます。
この記事で初盆の飾りについて知って、大切な故人をお迎えする準備をしてもらえればと思います。
もくじ
初盆の飾りってなぜするの?いつまでに飾る?
そもそも、初盆の飾りとはどのようなもので、何の意味があるのでしょうか?また、いつまでに用意すればいいものなのでしょうか?
まずはそういったことを確認していきましょう。
初盆の飾りをする意味
一部の宗派をのぞいて、日本の仏教では、お盆に精霊棚(しょうれいだな)や盆棚(ぼんだな)と呼ばれる特別な祭壇を作るのが一般的です。
この祭壇にはお盆用の飾りやお供え物などが置かれ、「故人やご先祖様の霊がお盆のあいだ過ごす場所」になるとされています。初盆のときは、飾る物が少し増えたりしますが、意味や飾り方が大きく違うわけではありません。
ただ、初盆は故人が亡くなってから初めて里帰りするときですから、普段のお盆よりもていねいに供養するのが昔からの習慣です。
これまでお盆の飾りなどを特別にしてこなかったという人も、これを機会にお盆の飾りかたや意味を覚えてみるのもよいのではないでしょうか。
初盆の飾りを準備するタイミング
初盆の飾りは、お盆初日の午前中に飾り付けをするのが一般的。飾りの準備は、その数日前までにしておくとスムーズです。
具体的な日にちは、8月13~15日にお盆をする地域では、8月10日頃までに。東京や金沢など7月13~15日にお盆をする地域では、7月10日頃までに必要な飾りをそろえておくとスムーズに準備ができます。
ただ、新しく買いそろえる場合は、選ぶ時間や配送をしてもらう時間が必要になるので、少し余裕をもって準備すると安心です。
初盆の飾りには何が必要?飾りかたは?
初盆の飾りにどんな飾り物やお供え物が必要なのでしょうか?また、どんな飾りかたをすればよいのでしょうか?
ここではその基本的なカタチを解説していきます。
初盆の飾りに使う飾り物
一般的な初盆の飾りには、これから紹介するようなものが置かれます。
祭壇または経机(小さな机)
先ほど説明したとおり、初盆の飾りとは“精霊棚(盆棚)”を作ることです。
まずは仏壇の前に祭壇か経机(お経をおく机)を置きます。
経机がない場合は小さめの机を代わりに使ってもかまいません。
真菰(まこも)の敷もの
祭壇や小机には、真菰(まこも)という植物でできた敷ものを敷きます。その昔、「お釈迦様が真菰の敷ものの上で病人を治療した」という伝説から、真菰は神聖なものとされています。
このような神聖なものを敷くことで、「故人やご先祖様を清らかな場所にお迎えする」という意味があるのです。
盆提灯(ぼんちょうちん)
柄や家紋の入ったお盆用のちょうちんです。ご先祖様が帰ってくるときの目印になるよう、明かりをともします。
白提灯(しろちょうちん)
初盆のときにだけ飾る白いちょうちんです。
これには、「初めて里帰りされる故人が迷わず帰って来られますように」、「安らかに成仏されますように」という意味があります。
白提灯は、初盆が終わった後に処分するのが習わしです。お寺でお焚き上げしてもらってもよいですし、自宅で燃やしてもかまいません。
自宅で燃やす場合は火事の心配もあるので、ほんの一部分だけ燃やしてから捨てるご家庭も多くあります。
精霊馬(しょうりょううま)
馬と牛の形をした飾りです。
馬には「故人やご先祖様があの世から帰ってくるとき、足の速い馬で早く帰ってきてもらう」という意味があります。
牛には「あの世に戻るとき、足の遅い牛に乗ってゆっくりと帰ってもらう」という意味や、「お供え物をたくさん積んで帰れるように」という意味があります。
これらはキュウリやナスに麻がら(麻の茎を乾燥させたもの)をさして作られることもあります。キュウリが馬、ナスは牛です。
初盆の飾りでお供えするもの
続いては、お供え物を見ていきましょう。
精進料理のお膳
肉や魚を使わない精進料理のお膳をお供えします。
これは、仏様となった故人をおもてなしするための料理です。
盛り付け方には決まりがありますが、詳しくは後に説明します。
水の子
「あの世から戻ってきた故人やご先祖様が、乾いた喉をうるおせるように」という思いを込めたお供え物です。
ナスやキュウリをさいの目に切り、洗った米と混ぜたものを、水をひたした器に入れます。お盆のあいだは毎日、新しいものに取りかえます。
閼伽水(あかみず)
「あの世から戻ってくるご先祖様と一緒についてきた悪霊を取り払う」という意味があるお供え物です。
きれいな水を入れた器に、蓮の葉を浮かべます。その上に5~6本のミソハギの花を束ねて浮かべることもあります。器に入れる水は、水道水でもかまいませんが、汲みたてのきれいなお水をお供えしましょう。
ほおずき
ちょうちんに似た形の樹の実であるほおずきを飾ることで、ご先祖様が迷わずに帰って来られるとされています。
野菜や果物
夏の野菜や果物をお供えします。例えば、野菜ならトウモロコシやレンコン、スイカ、果物なら桃やメロンが一般的です。
故人の好きな物
お菓子など故人の好きだった物をお供えします。
ただし、浄土宗ではこういった嗜好品はお供えしません。
線香
いつも仏壇で使っている線香でかまいません。お香は仏様のご飯になるという意味があり、仏教の供養ではかかせないものです。
生花
お墓へのお供えと同じように、菊やユリなどの生花を用意します。バラなどのトゲがある植物は避けましょう。
初盆にお供えする精進料理の盛り付けかた
昔はお盆の3日間、朝昼晩の毎回、精進料理を作りかえてお供えしていました。そして、集まった人たちも同じ物を食べてお盆のあいだを過ごしました。
しかし現代は食生活も違いますし、作りかえるのもなかなか大変です。お盆のあいだに一度だけお供えして、そのときだけみんなで同じ物を食べるという家庭も多くなっています。
そして、この精進料理の盛り付けには、下記のような5種類の器を使うのが決まりです。
飯椀(めしわん)
ご飯を入れる器です。ご飯は丸くなるように盛ります。
汁椀(しるわん)
お味噌汁またはお吸い物を入れる器です。出汁は昆布などを使い、カツオなどの魚は使いません。
平椀(ひらわん)
煮物を入れる器です。
壷椀(つぼわん)
煮豆や胡麻和えなどを入れます。盛りつけるときは、見た目が山の形になるよう盛ります。
高杯(たかつき)
漬物やお新香を盛りつけます。
初盆の飾りやお供え物の並べ方
まずはご本尊や位牌を一番奥に置き、真ん中にはお膳、水の子、精霊馬を置きます。そして、手前側の両端に花瓶、その手前にお線香の香炉を置きます。盆提灯はこれらの両脇に置いておきます。
白提灯については、家の目印となるように軒先に吊るすのが伝統です。
これが一般的な並べ方です。ただ、現代の家では、このとおりに並べるスペースが足りないこともあります
そういったときは、工夫して置ける場所に置きましょう。最近は、飾りやお供え物を、仏壇の引き出しや仏壇のそばに飾るという人も多くいます。また、白提灯を玄関の中や仏壇の前に置くことも一般的になってきています。
初盆の飾り方は宗派によって違う?
ここまでは一般的な初盆の飾りを紹介してきましたが、じつは初盆の飾りというのは宗派によって、しきたりが少し違います。
そのあたりの違いを紹介します。
宗派ごとの違い・気をつけること
浄土宗
浄土宗では小さな机などにゴザを敷き、その上に位牌やご本尊、お供え物をおくのが特徴です。また、故人が好きだった物や嗜好品をお供えすることはよくないとされています。
精霊棚(盆棚)に位牌やご本尊をお祀りしているあいだは、仏壇の扉を閉めておくのも決まりです。
曹洞宗
曹洞宗の初盆飾りは、基本の形とそれほど変わりません。
ただ、「精霊棚を白い布で覆うこと」と「お膳をお供えするときは位牌のほうにお箸を置く」決まりがあります。
真言宗
真言宗では、野菜や果物などをそのまま食べられように切った状態でお供えします。
浄土真宗
浄土真宗ではお盆の考え方が他の宗派と違い、「故人やご先祖様はあの世で仏様になり、お盆にこの世に戻ってくることはない」とされています。そのため、お盆の時期でも精霊棚(盆棚)を置きませんし、迎え火を焚いたりもしません。
ただし、お盆は大切な時期とされていることに変わりはありませんので、仏壇をきれいに掃除して線香やご飯をお供えするとよいでしょう。
日蓮宗
日蓮宗の初盆飾りは、仏壇の脇に青竹を立てるのが特徴です。
精霊棚(盆棚)は仏壇の前に設置し、仏壇の最上段には日蓮大聖人像を飾ります。
そして、その奥には曼荼羅(まんだら)をかけます。
初盆の飾りは全部そろえるべき?どうやってそろえる?
ここまで初盆の飾りをするための飾り物やお供え物をたくさん紹介してきましたが、これらを全部そろえるとなるとなかなか準備が大変です。
そもそも、全部そろえないといけないものなのか?また、簡単にそろえるには、どうしたらよいのか?を解説します。
飾りを全部そろえることよりも気持ちが一番大切
初盆の飾りを全て無理してそろえる必要はありません。なぜなら初盆の飾りは、初めて里帰りする故人への気遣いを表すものといえるからです。
「あの世から帰ってくるときは迷わずに無事帰ってきてほしい」、「この世に帰ってくるお盆のあいだ、ゆっくりと過ごしてほしい」、そういった気持ちが大切なのです。
せっかくの初盆も準備に手間やお金がかかりすぎると、悲しいことにそういった気持ちも薄れてしまうかもしれません。
ですから、あまり無理をせずに自分のできる範囲内で気持ちを込めて飾りやお供えをしましょう。
簡単に本格的な初盆飾りがそろえられる方法
とはいえ大切な初盆ですから、ある程度の飾りはしっかりとやりたいという人もいるかもしれません。
しかし、ここで問題となるのが飾り物をそろえる時間や手間がかかることです。初盆では、法要や会食の準備、お返しの用意などほかにも準備することがたくさんあって忙しいことが多いのです。
法要を行わない場合でも、お盆休み前に仏具店に行くスケジュールを空けるのが難しいこともあります。
そういった場合は、ネットの仏具店でセットになったものを注文するのがおすすめです。最近では、本格的な初盆の飾りがネットショップで売られています。そういったものを買えば、手間や時間もかかりません。
また、仏具店に行って断りきれずに想像以上の予算を使ってしまう心配もありません。ネットショップでは店舗の家賃などが上乗せされていないため、実店舗のお店よりも安く購入できるのです。
浮いたお金や時間は、故人の好きだった物をお供えするために使うのもいいのではないでしょうか。法要や手を合わせにいらっしゃった方へのお返しや会食費用にあてるのもいいでしょう。
飾りを選ぶときは、他の物では代用しにくい“白提灯”や“盆提灯”、“精進料理を盛る仏膳”などを含んだセットがおすすめです。しっかりとしたものを選べば来年以降のお盆も使えます。
ネットで選ぶならこういったセットがおすすめ
初盆の飾りをネットで選ぶといっても、どう選べばいいのかわからないという人もいるでしょう。
そこで、おすすめの商品を具体的に紹介します。
伝統工芸の上品な明かりで故人をお迎えする“初盆セット”
《セット内容》
・初盆用の白提灯
・盆提灯
・仏膳セット(お膳と5種類のお椀)
・精霊馬(馬と牛 各1体)
・真菰のゴザ
・蓮の葉(造花)
・おがら
上のように必要なものがセットになっています。
初盆に必要な白提灯はもちろん、盆提灯や仏膳もセットになっているため、来年以降のお盆でも使えます。
ちょうちんは伝統的工芸品である“岐阜提灯”が使われていて、上質な明かりが見た目にも華やかです。故人やご先祖様も安らぐことでしょう。
そのほか、精霊馬、蓮の葉、真菰(まこも)のゴザなどお盆独自の飾り物もセットになっています。おがら(麻がら)もついているため、伝統にのっとって迎え火・送り火のときに焚いてもよいでしょう。
それから、現代の住宅事情に合わせられた使い勝手のよさも特徴です。
ちょうちんの明かりにはLEDが使われていますので、狭いスペースや風通しが悪い家でも火事の心配がありません。サイズも大きすぎず、仏壇前のスペースがそんなに取れなくても問題ありません。
品質の面でも、東京浅草で大正2年から続く老舗・滝田商店ブランドだから安心です。それほど大掛かりな飾りはできないけど、初盆の飾りはしっかりとしたい、という人でも本格的な供養ができるセットになっています。
まとめ
故人やご先祖様の霊がお盆のあいだ過ごす場所を作り、おもてなしをする。初盆の飾りをすることには、そういった意味があります。
この特別な場所は、精霊棚(しょうれいだな)や盆棚(ぼんだな)と呼ばれ、お盆独特の飾り物やお供え物などを置きます。初盆のときは、これに加えて白提灯をともすのが一般的です。
忙しくて飾りの用意が大変なときは、ネットショップで注文するのも一つの方法です。簡単に本格的な初盆の飾りがそろえられます。
いずれにしても、一番大切なことは気持ちです。故人を思い、供養する気持ちを込めて初盆の飾りをしましょう。
(※この記事の内容は一般的な初盆について記載しています。地域や宗派によっては風習が少し異なることもあります。その場合は、ご自身が属する宗派や地域の習慣を優先してください。)