桃の節句で必ず登場する菱餅。お雛祭りの飾りにも菱餅がありますよね。その菱餅には縁起物としての意味があるのをご存知でしょうか。そこには菱餅にまつわる歴史や材料が関係していました。菱餅が縁起物とされる理由についてご紹介します。
もくじ
菱餅の歴史
桃の節句で必ずと言っていいほど登場する菱餅。現在はあまり食べられることはありませんが、昔は桃の節句で菱餅は必ず食べられていました。
そんな菱餅には、意外と知られていない歴史がありました。その歴史について調べましたのでご紹介します。
もともとは三角形だった
菱餅は現在はひし形をしていますよね。ですが、現在の菱形になったのは、江戸時代に入ってからのことです。
菱餅にはその原型と言われている餅があります。それは「菱葩餅(ひしはなびらもち)」という餅です。この菱葩餅は丸い餃子の皮のような形状をした餅の真ん中に甘く似たごぼうと白みそを乗せて半分に折って包んだものです。平安時代にお節料理の一つとして宮中で食べられていました。
この「菱葩餅」を包む餅が四角形になり、対角線上に折り曲げて中身を包んだ三角形上の餅が、菱餅になったと言われています。
ピンクが入ったのは明治時代から
菱餅は現在は下から緑、白、ピンクの3色ですが、ピンクが入ったのは明治時代に入ってからのことです。
それまでは緑と白の餅を交互に重ね合わせ、3段もしくは5段にしていました。ピンク色の餅を作る技術がまだなかったというのが大きな理由だと言われています。
明治時代に入ってクチナシの実を入れてピンクにするという技術が発達しました。ここから、菱餅にもクチナシの実が用いられて現在のように緑、白、ピンクの3色という形が定番になったのです。
菱形という形に縁起物の理由が隠されている
菱餅が縁起物とされているのには、その形に理由が隠されています。
菱形にはどのような縁起物のいみがあるのか調べましたので、ご紹介します。
①菱の花や実に意味がある
菱形という形は菱の実が原型とされています。その原型とされている菱の実は固いとげで覆われているという特徴があります。害虫から身を守るために固いとげを持っているのです。
菱の実の固いとげは身を守るためということが転じて、菱の実そのものに魔除けの力があると考えられるようになりました。その魔除けの力を菱餅にも込めようと考えた結果、菱形になったと言われています。
また、菱の花には強い繁殖力があります。強い繁殖力は、人間では子宝に恵まれるという考えに相当しますよね。その子宝に恵まれると連想させる繁殖力の強さは当然、菱の実にも伝わっているはずです。その形を模した菱餅にも子宝の運気が宿っていると考えられたのです。
このように菱形には魔除けと子宝の力があると考えられたことから、菱餅が縁起物と考えられるようになりました。
②風水学での心臓の形を表している
風水学では、心臓の形は菱形だとされています。
心臓は人間にとっての命の源ですよね。その命の源とも言える心臓と同じ形を餅で作って食べることで、強い生命力が宿ると考えられていたのです。
菱餅を菱形にすることで、生命の源であるエネルギーを体内に取り込み、より強い肉体を手に入れることができると考えられていたため、菱餅は縁起がいいとされていたのでしょう。
③陰陽道では菱形は女性を表す
陰陽道では菱形は女性を表します。
女性は新しい生命が生まれてくる源とされていました。とても神聖な存在だと考えられていたのです。
菱餅は主に女の子のお祭りである桃の節句で食べられますよね。女性の形を模した菱餅を食べることで、子宝に恵まれますようにという願いと、健康な赤ちゃんを生むことができますようにという願いが込められていたと言われています。
当時は女性にとっての幸せは結婚をして健康な赤ちゃんを生むことだと考えられていたため、女性の形を模した菱餅は女性にとって縁起がいいとされていたのです。
④大地そのものを表している
実は菱形は大地そのものを表しています。昔は大地は菱形をしていると考えられていたのです。
大地そのものを食べることで、大地の強い生命力やエネルギーが人間にも宿ると考えました。そのエネルギーや生命力を手に入れることで、健康で長生きできると思ったのですね。
また、大地の形を模した菱形を食べることで、豊作に恵まれるという考え方もあったようです。農作物はもちろん、山の幸や海の幸にも困らない生活ができると信じたのでしょう。
そのような意味から、菱餅は縁起がいい食べ物とされるようになったとも言われています。
菱餅の色にも縁起のいい意味があった
菱餅が縁起がいいとされているのは、形だけではありません。
菱餅の色は緑、白、赤の3色ですよね。この色にも、実はとても深い意味があるのです。
今度は菱餅の色に注目して縁起のいい意味を探っていきましょう。
赤は魔除け
菱餅の一番上にあたる赤には、「魔除け」の意味があります。
もともと日本では、「赤」という色には魔除けの意味があると考えられていました。太陽や生命を表すとされていた赤は、鬼や魔からするとそれこそ縁起でもない色だったのです。反対に生命力に満ちた人間にとっては縁起のいい色とされていたのですね。
また、菱餅の赤はクチナシの実で色を付けています。このクチナシそのものには、解毒作用があると言われていました。「毒を体内から取り除く」が「悪いものを身体から追い出す」に派生し、魔除けの効果があるとされたのです。
この二つの意味から、赤い菱餅には魔除けという縁起のいい効果という考えが定着しました。
白は子孫繁栄と長寿
菱餅の白には菱の実が使われています。
菱の実は、その昔大変長生きした仙人が菱の実を食べていたという伝説があります。このことから、長寿としての縁起のいい意味が込められています。
また、菱の花は大変繁殖力が強いという特徴があります。人間にとっての繁殖力とは子宝に恵まれるということです。そのため、子宝運が高くなるという縁起のいい効果が期待されています。
長寿も子宝運に恵まれることも、人間にとっては大変縁起のいい効果ですよね。そのため、菱餅そのものにも縁起がいい効果があると考えられているのです。
緑は厄除けと健康祈願
菱餅の緑にはヨモギが使われています。
実はヨモギには人間の血液を元気にする効果があるのです。血液が元気になると血色も良くなり、健康的な肉体に変化していきます。病気になりにくいという嬉しい効果もあるのですよ。
また、ヨモギの葉っぱは強い独特の香りがありますよね。植物の強い香りは鬼などのような悪い存在が嫌うという言い伝えがあります。このことから、ヨモギには厄除けの効果があるとされているのです。
健康的な肉体を手に入れることも、厄除けの効果があることも人間にとってはとても嬉しいことです。このことから、菱餅そのものも縁起がいいと考えられるようになりました。
まとめ
最近は食べる機会や人が減ってしまった菱餅。ですが、菱餅には大変縁起のいい効果がたくさん含まれていることがわかりました。
菱餅そのものは実際に健康にもとても良い効果をもたらしてくれます。健康な肉体はそれだけ嬉しいことや楽しいことを引き寄せるエネルギーも強いということです。
桃の節句には菱餅を食べてみるのも良いでしょう。厄除けはもちろん、身体にとっても良い効果のある食べ物ですから、きっとあなたを幸運に導いてくれますよ。