奈良の薬湯というものを知っていますか?大昔から伝わる薬草を使ったお風呂で、健康に効果があるとされています。
そのうえ、実は縁起の良いものでもあるのです。
お風呂に入るだけで健康増進・運気アップの一石二鳥です。
そんな「奈良の伝統的な薬湯」について、ここでは「その由来や健康効果」、「運気アップ効果」にいたるまで詳しく紹介します。
最後は、薬湯を楽しむ方法も紹介しているので、気になる人はぜひ最後まで読んでもらえればと思います。
もくじ
奈良に古くから伝わる“薬湯”とは?
薬湯は「くすりゆ」と読むこともあれば「やくとう」と読まれることもあります。
どんなものかというと、薬草を入れたお風呂のことで、さまざまな身体の不調を整える効果があるとされています。
それにならって天然の温泉で治療効果のあるものを薬湯と呼ぶこともありますが、ここでは薬草を入れたお風呂について解説します。
実は、昔の人の知恵が詰まった奥深いものなんですよ。
薬湯の由来
現代ではさまざまな入浴剤や温泉の素が売られていますが、そのルーツはなんと1200年以上前までさかのぼります。
飛鳥・奈良時代、仏教と一緒に中国の医学が日本に伝えられました。
そのなかでは、薬草を使って病気や体調不良を治す方法も紹介されいて、今でも奈良の東大寺正倉院には当時の薬草が残されています。
また、同じ時代に、お風呂に入る文化も伝えられました。
やがて、その2つが合わさってできたのが“薬湯”です。
平安時代には、戦(いくさ)で焼けてしまった東大寺を再建しようとしたとき、働く人たちの打ち身やくじきを治し、疲れをいやす目的で使われたといいます。
ただ、当時は現代と違うスタイルでした。熱くした石の上に濡れた敷物や薬草を敷いて、その上に寝転ぶ「蒸し風呂」です。
今風にいえば、ミストサウナのようなものでしょう。
その伝統は現代でも続いていて、奈良の東大寺のお坊さんが修行をするときは、薬草を使ったお風呂に入るのだそうです。
端午の節句のときに入る菖蒲(しょうぶ)湯や、冬至のときに入る柚子(ゆず)湯なんかは、そういった伝統的な薬湯が庶民の習慣として受け継がれたものといえますね。
薬湯に使われる薬草
初めて薬草が日本に伝わった時代、当時の皇后である光明皇后によって施薬院(せやくいん)という施設が作られました。
ここでは病人の治療や親のいない子どもたちの救済が行われました。
そのとき施薬院で使われていた薬草は記録として残されていて、「奈良の伝統的な薬湯」はこの時代と同じ薬草が使われていることがわかります。
具体的な薬草としては、「オウバク・トウキ・センキュウ・チンピ」などが使われています。
また、「シャクヤク・ドクカツ・ガイヨウ・コウカ・ショウキョウ」といったものを使うこともあります。
このなかには今でも漢方薬として使われているものもふくまれています。
つまり、今の時代でも実感できる効果があるということですね。その効果の内容については、次の章で詳しく解説していきます。
薬湯にふくまれる薬草にはどんな効果がある?
先ほど紹介した薬草にはどんな効果があるのでしょうか?そして、なぜ効果があるのでしょうか?
その理由を見ていきましょう。
血行が良くなって健康に
伝統的な薬湯には、「血行をよくして身体を温める薬草」が多くふくまれています。
たとえば、ミカン科の植物の皮である“オウバク”や、みかんの実の皮を乾燥させた“チンピ”などです。
寒い冬至の日に、同じかんきつ類のゆず湯に入る習慣もあることから、想像がつきやすいですね。
それから、ベニバナの花をきざんだ“コウカ”にも冷え性への効果があるとされています。その効果から養命酒などにも使われています。
そして、“トウキ” や“シャクヤク”といった薬草にも同じ効果があります。トウキはセリ科の植物の根っこを乾燥させたものです。
シャクヤクはボタンの仲間で、きれいな花を咲かせるシャクヤクの根を乾燥したものです。
この2つは漢方で一緒に使われることが多く、女性特有の不調や病気、冷え症などにも効くと昔から言い伝えられています。
漢方では、「身体の冷えは万病の元」といわれます。お風呂に入って身体を温めることは大切です。
そこに薬草の力がプラスされれば、血のめぐりが良くなるため、さまざまな身体の不調に効果があるとされているのです。
美肌・ダイエット効果も
薬湯には、ダイエットを助けてくれる効果があります。
薬草の効果で血のめぐりがよくなると、代謝が上がって脂肪が燃えやすくなるからです。
そして、美肌づくりにも効果があります。薬草から溶け出した成分が刺激を与えることで、お肌の新陳代謝が活発になるからです。
お肌のくすみや黒ずみの解消を助けたり、シミを予防してくれたりします。
また、ウドの根っこである“ドクカツ”には、殺菌して炎症をおさえる効果があるので、ニキビや肌荒れにも効果があるとされています。
そのほか、美肌に大切な保湿もばっちりです。セリ科の植物の根っこである“センキュウ”には、身体を温める効果のほかに、保湿作用があります。
市販の化粧水でもこのセンキュウを使ったものがあるほどです。
美肌に関しては、良い睡眠やストレス解消も大切といわれていますが、そういう意味では“チンピ”や“ガイヨウ”の香りが役立つでしょう。
これらの香りには安眠効果・リラックス効果があるとされているからです。
なぜこんな効果があるの?
このように、薬湯にはさまざまなメリットがあります。
ただ、なぜ効果があるのかは、科学的に明らかになっていません。
薬草からにじみ出た成分はたくさんあって複雑なので、どの成分がどの役割をしているか証明するのがむずかしいようです。
しかし、一つの説として「薬草が持つ自然の成分が、全身のツボを刺激するからではないか」といわれています。
ツボを押したり、お灸をすえたりするのは「私たちが持っている本来のパワーを目覚めさせる」ことが目的です。
そのパワーとは自然治癒力や免疫力などです。これによってさまざまな症状が改善したり、治ったりするのです。
薬湯も同じように、自然の力を取り戻させてくれます。「自然の薬草によって、自分本来の力が戻る。」薬湯は、そんな素晴らしいお風呂といえるでしょう。
薬湯には運気アップの効果がある?!
薬湯には、実は縁起の良い薬草が入っていたりもします。
健康効果にくわえて、運気を上げることもできるかもしれません。
邪気を払う
薬湯にふくまれていることの多い“ガイヨウ”はヨモギの葉っぱです。ヨモギは独特のニオイがしますが、このニオイには邪気を払ったり、浄化する力があるとされてきました。
日本ではその考えが残っている地域もあって、桃の節句にヨモギ入りの餅を食べたり、端午の節句に軒先にヨモギをつるす習慣があります。
このヨモギの不思議な力は、日本以外の世界中でも信じられていたようです。古代エジプトやローマ、中世のヨーロッパでも占いや厄よけに使われていたといいます。
それから、お風呂に入ること自体にも、いい意味があります。
仏教と一緒にお風呂が日本に伝わったころ、入浴は「七病を除き七福を得る」という教えがありました。
「お風呂で身体を清め健康になると、7つの病気が取り除かれ、7つの幸せを得ることができる」という意味です。
また、お風呂に入ることは「ケガレを落とす」という意味で、仏さまに仕える者として大切なつとめであったとされています。
子宝に恵まれる
先ほども紹介した“トウキ”という薬草には、「子宝に恵まれる」という言い伝えもあります。
「その昔、子どもができず家を出た女性が、この薬を飲んだところ子宝に恵まれる体になって夫のもとに帰れた。」
「里帰りして出産した女性の体調がすぐれなかったが、この薬を飲んだところ回復して夫のもとへ帰れた。」
トウキは漢字で“当帰”と書き、「当(まさ)に帰る」という意味がありますが、このような言い伝えが語源です。
おそらく昔の人もトウキの効果を実感していたからこそ、こういった言い伝えがあるのでしょう。
もちろん妊娠の問題は女性だけに原因があるとは限りませんが、薬湯は血のめぐりがよくなるため、男性に対しても効果があるといわれています。
妊活中の人は、二人で入浴してみるのもいいかもしれません。
財運・恋愛運アップ?
薬湯に入っていることの多い“シャクヤク”は、すらりとした茎の先にきれいな花を咲かせる植物です。
そのきれいさは、美人のたとえとして「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」といわれるほど。
「シャクヤクは美しい女性が立っている姿のようだ ボタンは美しい女性が座っているようだ ユリは美しい女性が歩く姿のようだ」という意味です。
そして、縁起の良い花としても知られています。仏教の世界観を伝えるために描かれる“仏教画”にもよく登場します。
また、風水では「富と名誉と愛の象徴」といわれ、花を飾ることで財運アップや恋愛運アップに効果があるとされています。
薬湯では根っこの部分が使われるため、花を見ることはできません。
しかし、その花には上で説明したような縁起の良さがあります。
花以外の部分にも、何らかの不思議なパワーがありそうな気もしますね。
奈良の伝統的な薬湯に入浴する方法
現代では、薬湯に使われる薬草と同じような効果を狙った入浴剤が、たくさん売られています。
たとえば、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどの科学的な物質が入っていれば、身体を温める効果があります。
しかし、薬湯の魅力は「自然の植物が持つパワーをいただけること」です。
その奥深さは、科学的に証明できることが全てではありません。そう考えると、本格的な薬湯に入ってみたくありませんか?
そこで、ここからは「伝統的な薬湯に入浴する方法」を紹介していきます。
霊山寺 薬師湯殿(りょうせんじ やくしゆどの)
奈良の市街地から少し離れたところに、1300年以上の歴史をもつ“霊山寺(りょうせんじ)”というお寺があります。
この霊山寺の敷地内には、“薬師湯殿”という温泉があります。
まだまだお風呂が貴重だった時代、このお寺を開いたといわれる小野妹子の息子は、薬草風呂を作り、さまざまな人に入らせてあげました。
その伝統的な薬湯に入浴できる施設が、この“薬師湯殿(やくしゆどの)”です。トウキ・センキュウ・オウバクなど天然の薬草のみを使ったお湯は、1300年以上の昔から続いてきた薬湯そのもの。
もちろん、お風呂場や脱衣所は現代風な建物になっていますので、安心して入れます。
近くに住んでいる方や、観光で奈良に訪れた方などは、気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。
住所:〒631-0052 奈良県奈良市中町3879
営業時間:9:00~19:00(最終受付18:30)
入湯料:大人600円 小人300円
アクセス:近鉄奈良線「富雄」駅から奈良交通バス「若草台行き(50番)」に乗り、「霊山寺」で下車。
URL:http://www.ryosenji.jp/spa.html
ネット通販で本格的な入浴剤を買う
とはいえ、時間や交通費などを考えると、お寺へはしょっちゅう行けませんよね。
そこで、もっと手軽な方法はないのかというと…伝統的な薬草を使った入浴剤を通販で手に入れる方法があります。
たとえば次に紹介するような入浴剤がおすすめです。
仏教伝来の頃より伝わる薬草を使った入浴剤
こちらは、仏教伝来の時代から伝わる8種類の薬草を使った入浴剤。ふくまれる薬草は、次のとおり本格的です。
ふくまれる薬草:オウバク・ドクカツ・トウキ・センキュウ・シャクヤク・チンピ・ガイヨウ・コウカ
ここまでに紹介してきたような代表的な薬草がふくまれているので、血行の改善や美肌づくり、冷え性改善など、さまざまな効果が期待できます。
しかも、これらの薬草がそのまま、きざんで袋に入れられているので、「薬草が持つ自然の力」をダイレクトに体験できます。
使い方も簡単で、お湯を張った浴そうにそのまま入れるだけ。軽く手でもみ、かき混ぜれば薬草の成分が溶け出します。天然の薬草らしい香りと色のお湯が、より効果を実感させる本格的な薬湯です。
まとめ
奈良に古くから伝わる薬草を使った“薬湯”は長い歴史のあるお風呂です。
入浴すると、血のめぐりがよくなり、さまざまな身体の不調に効果があるほか、美肌・ダイエット効果もあるとされています。
また、邪気を払う力があるという“ガイヨウ”や、子宝に恵まれるという“トウキ”など縁起の良い薬草をふくむ薬湯もあります。
これらの薬草を使った薬湯につかれば、健康になって運気も上がるかもしれませんね。
薬湯に入る方法としては、ネット通販で薬草を手に入れるのが、いちばん簡単です。最近では、本格的な薬草を入浴剤として買うことができます。
「身体やお肌の調子を整えたいとき」や「運気を上げたいとき」は、お家で薬湯につかってみてはいかがでしょうか。