結婚を祝う縁起物としておなじみの“婚礼家具(こんれいかぐ)。
一昔前までは嫁入り道具の一つとして大切なものとされていましたが、今では見ることが減りました。
しかし、婚礼家具には大切な意味があるのも事実。昔の習慣だからと、ナシにしてしまうのはもったいないことです。
ここでは、そんな婚礼家具について「婚礼家具とはいったい何なのか?」や「どんな意味があるのか?」などを、くわしく解説していきます。
これから結婚する新婦さんも、そのご両親もぜひ読んでみてください。「最近の事情にあわせた婚礼家具の選び方」も紹介しているので、婚礼家具を置く場所がなくてあきらめていたという方も必見です。
もくじ
婚礼家具とは?
婚礼家具とは、男性側の家に嫁ぐときに、新婦が嫁入り道具の一つとして持っていく家具一式のことです。一昔前までは、女性の親が婚礼家具を準備して、新婚生活を始めるのが当たり前の光景となっていました。
家具の種類は地方によって少し違いはありますが、次の3種類のタンスをセットで用意するのが一般的です。
・着物を入れるための「和ダンス」
・ワンピースやコートなどをハンガーにかけて吊るす「洋服ダンス」
・折りたためる衣類を収納する「整理タンス」
これらは、並べておけるようにデザインを統一し、長く使えるようにしっかりとしたつくりのものが選ばれました。なかには、立派な装飾が入った高価な家具を贈る場合も。タンスのほかに、ドレッサーなども婚礼家具としておなじみです。
若い世代でも、そういった立派な家具が実家にいくつかあったのを覚えているという人も多いのではないでしょうか。
この習慣は、とくに関西や名古屋でさかんで、婚礼家具を運ぶトラックの荷台には紅白の垂れ幕をかけて、パレードのように町内を一周する地域もあったのだとか。このとき、トラックは「バックしてはいけない」という決まりもあったそう。なぜなら、「出戻り」を想像させるため縁起が悪いとされていたからです。
このように、新婦となった娘に高価な婚礼家具を贈ることは、両親にとって一大イベントでした。娘さんがたくさんいるお家は、大変な思いをして用意していたといいます。それだけ、大切な習慣だったのですね。
婚礼家具ってどんな意味があるの?
新婦のご両親が大変な思いをしてでも用意していたという婚礼家具ですが、そんなに手間やお金をかけて婚礼家具を贈るのには、いったいどんな意味があるのでしょうか?
一つは結婚を祝う縁起物としての意味がありますが、実はそのほかにも大切な意味があるんですよ。一つずつ紹介していきます。
結納に対するお返し
ここ最近は、結納(ゆいのう)を行わない新婚カップルも増えてきました。しかし、少し前までは両家が集まって婚約の儀式である結納を行うのが一般的でした。
結納では、「女性が嫁入りの準備をするため」として新郎側から新婦側に、「結納金」といわれるお金を贈るのがならわし。その結納金に対するお返しとして、新婦側の両親が持たせたのが、婚礼家具などの嫁入り道具なのです。
嫁ぎ先で恥をかかないように
昔は、「結婚した女性は男性の家に入る」という考え方が当たり前でした。そのため、結婚と同時に男性の実家で新婚生活をスタートする女性がほとんど。
そうなると、男性の家族や親戚だけではなく、ご近所さんともお付き合いしていかなければなりません。そこで、知らない土地に嫁いだ娘が「恥をかかないように」との思いから、立派な家具を待たせてあげたのです。
財産分与
少し現実的な話ですが、豪華な婚礼家具には財産分与の意味もあります。たとえ両親からといえども、娘に財産を分け与えると贈与税(ぞうよぜい)といわれる税金がかかってしまいます。
その税率は想像以上に高くて、例えば親が娘に1,000万円を渡した場合の税額は、200万円近くになります。
しかし、贈与税には「お祝いやお見舞いとして贈るお金・品物には課税されない」という例外があります。そこで、結婚祝いの婚礼家具として贈れば、税金がかからないということですね。
つまり、高価な婚礼家具を用意することは、娘に少しでも多く財産を分けてあげる方法といえるでしょう。
嫁ぐ娘の幸せを願う
ここまで紹介してきた婚礼家具を贈る意味には、共通している点があります。それは、「娘の幸せを願う親の気持ち」です。
娘が恥をかかずうまく生活していけるように。娘に少しでも多くの財産を分けてあげられるように。そこには、「嫁ぐ娘に対してやれることは最大限してあげよう」という親心が込められているのです。
近頃は見ることが減ってきた婚礼家具ですが、そう考えると素敵な習慣でもあったのですね。
婚礼家具を処分しても大丈夫?
そんな大切な意味を持つ婚礼家具ですが、悲しいことに最近では処分したいと思っている人も多いとか。
その理由は、現在の住宅事情に合わずスペースをとってしまうから。最近の家は、クローゼットがもともと備え付けられていたりして、大きな収納家具が必要ない場合も多いのです。
処分しようと思った場合は、中古品として買い取ってもらうか、オーダーメイドの家具屋さんに頼んでリメイクしたりといった方法があります。
しかし、縁起物のお下がりとなってしまうことから買取の値段がつきにくかったり、リメイクにもお金がかかるという問題があります。捨てようと思っても、婚礼タンスはしっかりとして重いため、運び出すのも難しいものです。
それに、せっかく親心で用意してくれた家具を処分するというのも、辛い気持ちになってしまいますね。
そうならないためには、処分しなくてもいいような婚礼家具選びが大切です。これから婚礼家具を選ぶという人は、次の章で選び方を解説しているので、ぜひ続きを読んでみてください。これから結婚する娘さんも参考になりますよ。
現代の事情にあわせた婚礼家具の選び方
昔とは住宅事情が変わってきたこと、それから結納を行わない結婚も増えてきたこと、このような事情から婚礼家具を用意しないというご両親も増えてきました。
しかし、「結婚する娘さんのために何か形に残るものを持たせてやりたい」と思うご両親は多いのではないでしょうか。
娘さん側としても、役立つものをもらえれば助かりますし、親御さんの愛情を感じられるものとして形に残るはいいことです。また、何も持たずに嫁入りすると、彼の両親から何かいわれるのではないかと心配する必要もありません。
では、婚礼家具として何を渡すのがいいのでしょうか?先ほどの話でもあったように、後々処分しないですむような婚礼家具を選ぶことが大切です。
そのために大切な「選び方のポイント」と「おすすめのもの」を紹介していきます。
選びかたのポイント
婚礼家具などの嫁入り道具を選ぶにあたっては、次のようなポイントで選んでみると最適のものが見つかります。
・新生活にあたって必要なものを選ぶ
・社会生活で一人の大人として必要なものを選ぶ
もちろん家具でも大丈夫ですし、家具以外でもかまいません。伝統を大切にしている家柄に嫁ぐなら別ですが、そうでないのなら、形にとらわれることはありません。
大切なのは、娘にとって役に立ちそうなものを選ぶこと。新婚生活で必要なものは、たくさんあります。
次からは、具体的な物を紹介していきます。
家具なら“食器棚” がベスト
伝統的な婚礼家具もいいのですが、タンスはクローゼットで代用できますし、近頃は「無駄な物はなるべく置きたくない」、「タンスは収納スペースが足りなくなってきてから購入する」というライフスタイルの新婚カップルも多いそう。
それでは、どんな家具を選べばいいのかというと、“食器棚”がおすすめです。初めて二人で暮らすとなると、食器や調理器具などの数が意外と多くなるもの。
キッチン収納が増えて困ることはありません。食器棚が備え付けの家はまだまだ少ないですし、新生活で役立ちます。食器棚なら次のようなものがおすすめです。
■上質な木材を使ったキッチン収納
ポイントはいい材料を使っていることと、現代風のお家に合うシンプルなデザインです。
アルダー材といわれる家具ではおなじみの木材が使われていて、イイもの感があるうえ、自然な風合いだから長く使うほど味が出てきます。また、シンプルでナチュラルなデザインが、今の若い人にも気に入ってもらえるでしょう。
炊飯器やオーブントースターなどキッチン周りの家電を置けるスペースがあったり、ガラス扉があったり、使い勝手が考えられているのもいい点です。
家具の代わりに“家電”でもいい
しかし、「家具は自分たちで選びたい」というこだわりのある新婚カップルもいます。そういったときは、家電がおすすめです。新生活に必要だけど、自分たちでは買えない高価なもの、長く使えるものがいいでしょう。
例えば、こういったものがおすすめです。
■リビング用のエアコン
長く使うなら新しい機能がついたエアコンがおすすめです。例えば、このエアコンなら、AI技術を使ったセンサーでお部屋の温度変化を学習して、ちょうどいい体感温度に自動で調節してくれます。
有名なシリーズの上位機種なので、品質もばっちりです。
冠婚葬祭で身につけられる「パールのネックレス」
家電は役立ちますし、おすすめです。しかし、新郎と新婦がひとり暮らしで使っていた家電を持ち寄って生活する、ということもあります。
そういった場合は、冠婚葬祭で身につけられるもの。例えば「パールのネックレス」などがおすすめです。これから社会生活をいとなむうえで、冠婚葬祭の場面は必ず訪れます。
一人の大人として恥ずかしくないよう、質のいいパールのアクセサリーがあると、いざというとき助かるのではないでしょうか。
■鑑別書付きアコヤ真珠のネックレス
日本産アコヤ真珠を使ったパールネックレスです。上品な輝きが特徴で、冠婚葬祭などフォーマルな場面でも活躍します。
使われていてる真珠は、日本でもっとも審査基準が厳しいといわれている真珠鑑定機関「真珠科学研究所」で高評価を獲得したものです。鑑別書も付いているので、本物の真珠ということが証明されています。財産を分けるという意味でもおすすめです。
これからの生活で必要な「新姓の印鑑」
パールの場合と同じ考え方になりますが、「新姓の印鑑」も社会生活で役立つものです。
入籍後に夫の姓を名乗ることになったとき、銀行印の変更などで新しい姓の印鑑が必要になります。また、今後の結婚生活で重要な契約ごとがあれば、実印も必要になる場面があるでしょう。
そういった印鑑を入籍前から準備しておけば、さまざまな手続きなどもスムーズに進められます。
まとめ
婚礼家具とは、新婦が入り道具の一つとして持っていく家具一式のことで、和ダンス・洋服ダンス・整理タンスの3種類をセットで用意するのが一般的です。
これには「結納に対するお返し」としての意味があります。それにくわえて、「娘が嫁ぎ先で恥をかかないように」、「娘への財産分与をかねて」など、親心として嫁ぐ娘の幸せを願う縁起物でもあるのです。
そんな婚礼家具ですが、近頃は用意しない場合も増えてきました。でもやっぱり、結婚する娘さんのために婚礼家具を用意してあげたい、と思うご両親も多いのではないでしょうか?
そういったときは、現代のライフスタイルにあわせて選ぶのがおすすめです。家具なら食器棚、家具以外にも家電などは新生活で役立つため喜ばれます。
また、家具や家電以外でも、社会生活で一人の大人として必要なものを選ぶのも一つの方法です。例えば、冠婚葬祭で身につけられるパールのネックレス、新姓の印鑑など。
形にとらわれることはありません。大切なのは、「娘の幸せを願う親心」です。
これから結婚するという新婦の方も、ご両親が婚礼家具を買ってあげたいと申し出たときは、その気持ちを大切にしてくださいね。家具はいらなくても、ここで紹介したようなものを、おねだりしてもいいのではないでしょうか。